トップメッセージ

事業を通じて
環境・社会課題の解決に貢献し、
「AI×人財」の力で
「総合たてものサービス企業」を
実現します

大成温調株式会社 代表取締役 社長執行役員

水谷 憲一
大成温調株式会社 代表取締役 社長執行役員 水谷 憲一

多様化するニーズに幅広い付加価値を提供

大成温調株式会社は、創業以来、空気調和・給排水衛生・電気設備工事および省エネルギーソリューションを中心に、安全・快適で環境にやさしい社会インフラの創造に取り組んでいます。
昨今の社会情勢を見ると、従来の価値観が揺らぐとともに、世界は分断され、先を見通せない不確実性の高い時代に突入しています。企業経営においても多様化するリスクへの対応の強化が求められています。一方、AIをはじめとするテクノロジーの進化など、対応次第で新たな事業機会につながるポジティブな変化も生まれています。
当社グループは2021年度に長期経営ビジョン「LIVZON DREAM 2030」を策定し、「専門設備工事会社」から「総合たてものサービス企業」への事業モデルの転換を進めています。「LIVZON(リブゾン)」とは、人々の暮らしや営みを表す「LIVE」と、未知を表す「Z」、物事を活性化させていくという意味の「ON」を組み合わせたブランド名で、「総合たてものサービス企業」とは、ブランドステートメントである「たてものを、いきものに」をコンセプトに、多様化するニーズに幅広い付加価値を提供する企業を意味するものです。
掲げる長期経営ビジョンのもと、時流を読み、リスクと表裏一体にあるチャンスを捉え、従来の設備工事会社のあり方から、さらに一段高い姿を実現するべく、グループ一体となって、まい進してまいります。

利益率向上に向けた取り組みにより4期連続の増益を達成

建設業界においては世界情勢の緊迫化や長引くインフレを背景に、資材・機材や労務費の上昇、人手不足による施工能力の制約といった課題がさらに深刻化しています。一方で、大都市圏を中心とした再開発案件や、製造業を中心とした設備投資などの建設需要は旺盛で、既存建物の設備更新や省エネルギー化などのリニューアル需要も継続しています。
こうした事業環境を踏まえ、当社グループの2026年3月期の業績は、国内の建設需要の活性化に伴う受注増加と、全社的な利益率・生産性向上に向けた取り組みが奏功し、売上高は前期並みの水準となりました。また、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも予想を上回り、4期連続の増益となりました。売上高は前期比1.3%減の61,719百万円、営業利益が同27.8%増の3,980百万円、経常利益が同32.0%増の4,597百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同42.7%増の3,549百万円となっています。

地域セグメント別の業績については、国内では受注段階での採算管理の厳格化や採算重視の資源配分を進めた結果、大都市圏での再開発案件、商業施設などの大型新築物件の受注増につながりました。国内連結子会社であるウッドテック株式会社の収益性向上も後押し材料となりました。
海外においては、米国セグメントは大型コンドミニアム案件の工事進捗や依然堅調な不動産および建築市場から売上高は前期と同水準で推移しました。利益面では、工事の順調な進捗や円安の影響も追い風となり、過去最高益を達成しました。一方、中国セグメントは、中国経済の成長の鈍化などを背景に、主な取引先であった日系自動車関連企業の撤退や、工事開始時期の遅延などが影響し、減収となりました。
今後の見通しとしては、良好な受注環境と受注案件の大型化により、次期繰越工事高は引き続き増加傾向にある一方、資機材価格や労務費の上昇傾向、工期の長期化、人員配置の難しさは依然として大きな課題です。地政学リスクに伴う調達環境の不確実性の高まりに対しては、市況に応じた「価格スライド制(市場の物価変動に応じた契約単価の見直し)」の適用など対応を進めています。
海外においても、中国の内需をターゲットにした企業に向けた事業を展開しつつ、受注環境の底打ちも見られる中、体制維持に向けた取り組みを進めています。

「1st half!」で構築した「稼ぐ構造」を「2nd half!」でスケールする

2025年度は、先に挙げた長期経営ビジョン「LIVZON DREAM 2030」の前半戦に位置付けられる、中期経営計画LIVZON DREAM 2030「1st half!」(以下「1st half!」)の最終年度でもありました。前期同様、コア事業の収益性改善、成長のための土台作りに向け、3つの基本方針に掲げる「基盤事業の深耕」「成長への投資」「経営基盤の整備」のもと、様々な施策を進めてきました。
「1st half!」の成果の一つとしては、インフレの逆風を受けながらも、掲げた経営指標(KPI)を一部前倒しで全て達成できたことが挙げられます。
もう一つは、定性面での進化です。2021年から5年間、地道に施策を積み重ね、受注案件審査・原価管理の高度化、DX・データ活用基盤の整備、現場支援体制の拡充、積極的な人財投資によるスキルアップと処遇の改善を実現できたことは、継続性のある利益を生み出す「稼ぐ構造」の確立につながる成果と捉えています。

次の2026~2030年度の新中期経営計画LIVZON DREAM 2030「2nd half!」(以下「2nd half!」)は、「1st half!」で構築した経営基盤や事業構造をスケールさせていく5年間になります。掲げるコンセプトは、「『技術』をコアとして『人財とデータ』で成長を加速する」。2031年3月期のKGIとして連結営業利益70億円以上の達成を目指しています。
「1st half!」の5年間においては、前提条件の変化や積み残した課題も多くあります。データセンターや半導体関連施設をはじめとする次世代型産業需要の高まり、建築費やエネルギーコストの高騰による既存建物の改修・更新需要の拡大、人手不足や働き方改革定着による施工能力の限界といった事業環境やニーズの変容に対応するべく、三つの成長戦略を重点テーマとし、収益構造の再構築を進めてまいります。
一つ目が「高度エンジニアリング領域の拡大」です。今後の設備工事事業において持続的成長を維持していくうえでは、施工量の拡大だけではなく、付加価値重視の戦略が求められます。重点領域にデータセンターや半導体などを掲げ、経営資源の集中を進めてまいります。
これらの分野では、高効率空調や極めて高精度な温湿度管理、清浄度管理、冗長設計といった高度な専門技術が求められます。これまで産業用・医療用施設案件などで培った技術力やマネジメント力を活用するとともに、先端的な冷却技術などにも対応するべく、専門人財の獲得・育成やM&A、アライアンスも活用し、高付加価値市場への本格的な参入に挑んでいく計画です。
二つ目が「ストック収益の最大化」です。当社では、これまでも保守・メンテナンス、修理といったいわゆるストックサービスを展開してまいりました。「2nd half!」では、サービスの質にこだわり、保守・改修領域での継続収益の最大化に取り組んでまいります。そこで要となるのがデータです。設計業務や施工業務を通じて蓄積した建物や設備のデータを最大限に活用し、メンテナンスの高度化、改修・更新提案の精度向上につなげてまいります。従来、経験や勘に依存しがちだった分野でもデータドリブンを進め、データ活用により建物価値を高め続ける会社を目指し、サービスの高度化を図っていきたいと考えています。
三つ目が「生産性の向上」です。当社では、複数のプロジェクトの支援業務を担う工務統括部や、ベトナムに設立したオフショアエンジニアリング会社の強化により、従来から業務効率化と施工支援機能の拡充を進めてきました。こうした戦略的なアウトソーシングを加速するほか、3次元の設計を実現するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や、オフサイト施工、ユニット工法などによる設計・施工の標準化をさらに進めていく計画です。
また、2025年10月に稼働を開始した「LIVZON サイバープラットフォーム」をデータ連携基盤として、情報共有や意思決定の迅速化を図り、一人当たり売上高30%増(2026年3月期比)を目指してまいります。
これらの成長戦略を進め、目標達成を目指すにあたって、重要な経営基盤となるのが人的資本です。加えて、今後はデータ・AI活用が企業の成長を大きく左右するカギとなります。当社では、「人的資本」と「データ・AI活用」を二大経営資源に位置付け、人とデータの掛け合わせを基盤に、成長戦略を進めていく構造を描いています。
人的資本については、人件費効率(創出付加価値÷投入人件費)で組織パフォーマンスを測り、その最大化に向けて、「採用強化」「育成・リスキリング」「処遇改善・エンゲージメントの向上」の3軸で様々な施策を進めてまいります。
「採用強化」に向けては、採用チームの補強や採用パートナーとの連携など、仕組みや構造作りへの投資を積極的に行い、「育成・リスキリング」においては、技術教育や資格取得支援のほか、AIの活用もポイントとなっていくでしょう。「処遇改善・エンゲージメント向上」については、公正な評価制度や柔軟な働き方の推進といった制度面の整備のほか、2024年度から実施している「エンゲージメントサーベイ」や、取締役の評価指標にエンゲージメント目標を組み込むなど、全方位で取り組んでまいります。
二つ目の経営資源であるデータ・AI活用に向けては、先に挙げた「LIVZON サイバープラットフォーム」にAIを掛け合わせ、意思決定の高度化・精度向上に加え、業務の効率化や品質の向上、さらに高度な提案など、組織・サービスの一体化、高度化を進めていく計画です。
培ってきた技術、人財、データにAIを掛け合わせることで、一段高い付加価値を創出できる企業になることに、私自身非常に大きな期待を寄せています。5ヵ年の成長投資は190~230億円を見込んでいます。
攻めの成長戦略を進めていくうえでは、守りとなるリスクマネジメント・サステナビリティに向けての取り組みも肝要です。近年、多発する自然災害などの気候変動リスクや深刻化する地政学リスクへの備えを進めるとともに、設備更新やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などの省エネルギー提案なども積極的に進めてまいります。お客さまへの提供価値の高度化に合わせ、事業を通じた環境保護と成長を両立させ、中長期的な事業機会の拡大を図っていく計画です。

大成温調株式会社 代表取締役 社長執行役員 水谷 憲一

DOE3.8%を目処とした安定配当、将来的に4.0%以上へ引き上げ

当社では中長期的な事業の成長を図りながら、成長投資と株主還元を両立するキャッシュアロケーションを推進しており、株主還元については、連結純資産配当率(DOE)3.8%を目処とする安定配当を継続的に実施する基本方針としてまいりました。その方針に基づき、当期の年間配当金は普通株式1株につき179円といたしました。「2nd half!」では、2030年度までにDOE4.0%以上を目指してまいります。
不透明感の強い時代にあって、「2nd half!」の5年間においても様々な外部環境の変化に見舞われることが想定されます。予測できない事業環境の変容に対しては、ある意味、朝令暮改を恐れず、臨機応変かつ柔軟に対応していくことも、今後の経営においては重要なポイントだと考えています。
一方で企業価値向上を図っていくうえでは、短期的な変化に惑わされず、ブレることのない大きな道筋を全社で共有することも肝要です。2030年度に目指す「総合たてものサービス企業」の実現に向けて、しっかり投資をし、施策を積み重ねていく姿勢に変わりはありません。

従来の設備工事会社の単なる延長線上にとどまらない成長を目指し、企業価値の向上に取り組んでいく姿勢にご期待いただくとともに、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。